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四国の片田舎に住む大学生が 広く浅く物事について書き綴っていくブログ

【cool japan】人間椅子/江戸川乱歩を読みました【hentai】

               

 

今週、某古本チェーン店で小説を物色していたところ、この作品が目にとまったため購入してみました。

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江戸川乱歩との出会い

江戸川乱歩との出会いは確か小学低学年の頃でした。

風邪をひき布団の上で暇を持て余していた僕のために、母が近くの書店で怪人二十面相を買ってきてくれたのでした。

 

当時はそれほど読書に興味がなかったためあまり気は進みませんでしたが、他にできることもなかったため「まあよんでみようか……」といった気持ちで読み始めたことを覚えています。

 

するとまあ面白いこと。

対象年齢ががっちりはまっていたというのもあるのでしょうが、一気読み(いっきよみです、大学生の飲み会でよくあるやつじゃないです)し、次の日には続編も買ってきてもらいました。

 

その時続編を買ってきてと頼んで本当に良かったと思います。もし母が「作者が同じだからこれでもいいか」というような気分で人間椅子を買ってきていたら、幼かった僕に対する衝撃はかなりのものになったと思います。

なんなら成人した今読んでもかなりの衝撃でしたから。

 

といった謎の前置きはこのへんにして作品の説明をしていこうかと思います.

 

作品のあらすじ

まず文庫本のあらすじです。

 

貧しい椅子職人は、世にも醜い容貌のせいで、常に孤独だった。惨めな日々の中で思いつめた男は、納品前の大きな肘掛け椅子の中に身を潜める。その椅子は、若く美しい夫人の住む立派な屋敷に運び込まれ……。椅子の皮一枚を隔てた、女体の感触に溺れる男の変質的な愛を描く。角川ホラー文庫巻末より

 

有名な作品ですのでたあらすじをご存じの方も多いかと思います。

僕のこの作品へのイメージは「変態が椅子の中に隠れてハアハア(*´Д`)する」といったものでしたが、ほとんど相違なかったです。(*´Д`)してました。

                   

作品紹介

物語は、主人公である美しい閨秀作家への一通のファンレターを読む形で進んでいきます。というかほぼその手紙の内容だけで作品が完結してますね。

男は自らの最高傑作である椅子への手放したくない、離れたくないという思いから、その椅子の中へ自らの身を潜めます。そのまま、その椅子はあるホテルへと納品され、男の人間椅子生活は始まります。

当初は人気のなくなったころを見計らい、盗みを働くことを目的としていたようですが、女性が椅子に座った際の興奮に気づき、途中からはそちらを目的として人間椅子生活を続けることになります。

 

女は神聖なもの、いや寧ろ怖いものとして、顔を見ることさえ遠慮していた私でございます。其私が、今、身も知らぬ異国の乙女と、同じ部屋に、同じ椅子に、それどころではありません、薄い鞣皮一重を隔てて肌のぬくみを感じる程も、密接しているのでございます。それにも拘らず、彼女は何の不安もなく、全身の重みを私の上に委ねて、見る人のない気安さに、勝手気儘な姿体を致して居ります。私は椅子の中で、彼女を抱きしめる真似をすることも出来はす。皮のうしろから、その豊な首筋に接吻することも出来ます。その外、どんなことをしようと、自由自在なのでございます。」本編より

 

うーん実に気持ち悪いですね。さすがは江戸川乱歩です。

 

長く続いたホテルでの人間椅子生活も、ホテルの閉鎖によって終わりを告げ、しかしその後も、競りによって売却された人間椅子は新しい住処へと移ることとなります。それが主人公の家です。

それを手紙で読んだ主人公「オオ、気味がわるい」

ぐう正論ですね

 

人間椅子へどう対応したものかと困っている主人公に、女中から今届いたという封筒が渡されます。

その封筒には今まで読んでいたものと同じ筆跡で文字が書かれていました。人間椅子からのようです。

開封すべきか否か迷いに迷った末、その封筒を破り中を確認すると中にはこうつづられていました。

 

突然御手紙を差上げます無躾を、幾重にもお許し下さいまし。私は日頃、先生のお作を愛読しているものでございます。別封お送り致しましたのは、私の拙い創作でございます。御一覧の上、御批評が頂けますれば、此上の幸はございません。ある理由の為に、この原稿は、この手紙を書きます前に投函致しましたから、已に御覧済みかと拝察致します。如何でございましたでしょうか。若し、拙作がいくらかでも、先生に感銘を与え得たとしますれば、こんな嬉しいことはないのでございますが。原稿には、態と省いて置きましたが、表題は「人間椅子」とつけたい考えでございます。では、失礼を顧みず、お願いまで。怱々。」本編より

 

なあんだ、といった感じですよね。

結局はただのフィクションだったという結びでこの作品は終わりです。よかった、よかった。

でも待てよ…

しかし実際に読んでもらえば分かるのですが、他人であるはずの手紙の主がかなり主人公について知っているというような文章があります。

このことから本当はまだ椅子の中に身を潜めているのではないか、といった解釈も往々にされているようです。

 

僕個人としては作品の結末通りに解釈しています。

本当に人間椅子が存在しているのだったらすぐに破綻するだろうな、という少し夢のない(?)考え方なのですがね。

 

正直、皮一枚隔てておっさんが椅子の中にいたらかなり生ぬるくなると思います。※マジレス乙。

 

しかし、執筆から何十年たった今も真相が議論されている事実は江戸川乱歩にとってはしてやったりといった感じでしょうね。

 

 おわりに

いかがだったでしょうか。

 

本記事冒頭のように、幼い頃に怪人二十面相シリーズだけ読んだことのある方にとっては衝撃的な内容だったのではないでしょうか。

 

この作品を読んだあとの、ぞっとして、嫌悪感で包まれるようなこの独特な感覚を楽しめるのであれば、乱歩ファンになれることでしょう。一緒に乱歩ワールドを楽しみましょう。

 

 

本作品をはじめ、短編であればかなりの作品が青空文庫に登録されているようです。

気になった方は目を通してみてはいかがでしょうか。

 

青空文庫

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